オペラ白虎

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オペラ「白虎」全二幕

スタッフ

作曲:加藤 昌則
台本:宮本 益光
指揮・芸術監督:佐藤 正浩(会津若松市出身)
演出:岩田 達宗
制作統括:石原 正之(会津若松市出身)

出演

飯沼貞吉(テノール):藤田 卓也
飯沼貞雄(貞吉)(バス): 高橋 啓三(福島市出身)
西郷頼母(バリトン): 黒田 博
西郷千重子(ソプラノ): 腰越 満美

オペラ白虎合唱団
オペラ白虎特別編成オーケストラ

あらすじ

第一幕

〈第一場〉
戊辰戦争。若き白虎隊士中二番隊が飯盛山で集団自決してから約60年が経過している。そこに一人生き残った飯沼貞雄(もとは飯沼貞吉。改名して貞雄に)。
仲間の鎮魂を願いつつ子守歌【飯沼貞雄のソロ「会津の子守歌」】を歌う。

〈第二場〉
慶応四年八月二十二日の朝。西軍(新政府軍)の行軍歌が聞こえてくる【混声合唱「宮さん、宮さん」】。とうとう飯沼貞吉の属する白虎隊にも出撃命令が下る。
貞吉は伯父である西郷頼母の屋敷に赴き、頼母の妻、千重子に暇乞いをする。
武家の女として千重子は、貞吉に武士として立派に死ぬよう諭す。【西郷千重子のソロ「貞吉、あなたは会津武士」】もとより貞吉もそのつもりである。

〈第三場〉
同日、同場所。千重子は貞吉に西郷頼母にも暇乞いをするよう促すが、貞吉はこれを拒む。頼母が恭順説を説き謹慎させられていることを、貞吉は恥ずべきことと考えていたからである。そこに西郷頼母が登場。会津武士としての誇りは、生き様は…。もともと尊敬していた伯父、頼母の言葉が貞吉の心に刺さる【西郷頼母のソロ「あの白雲を見よ」】。

第二幕

〈第一場〉
慶応四年八月二十二日の午後。死を覚悟した会津の人々の慟哭の声がする【混声合唱「たとえ命が尽きるとも」】。そこに頼母の言葉を反芻し葛藤する貞吉。武士の道とは…【西郷頼母と飯沼貞吉の二重唱「命捨てることが真の勤めか」】。
そしてとうとう西軍が会津城下に。

〈第二場〉
西郷頼母の屋敷では、残された女たちが「生きて敵から恥辱を受けるのも許しがたし」と、武家の女の生き方として自決を決意。子らと共に壮絶な自決を果たす【西郷千恵子の自決「なよ竹の風にまかする身ながらも…」】。

〈第三場〉

そして同じ頃、飯盛山には疲弊しきった白虎隊の面々。西軍に踏みにじられた会津城下を見て次々と自決する。貞吉も母からもらった歌を吟じた後、刃を喉につきたてるが…【飯沼貞吉の自決「梓弓向う矢先はしげくとも…」】。

〈第四場〉
会津藩降伏後の飯盛山。生き延びた貞吉。仲間の死を嘆き、生き延びたことを悔やんでいるが、仲間の死に様を前に再び武士の道について考える貞吉。思い出される頼母の言葉、千重子の思い。貞吉は白虎の魂を内に秘め、生きることを決意し、鎮魂の子守歌を歌う。

みどころ

有名な史実である白虎隊の集団自決。生き残った飯沼貞吉にスポットをあて、戊辰戦争の一コマを描く。恭順説を説いた筆頭家老・西郷頼母を伯父に持つ飯沼貞吉が、会津武士の生き様と頼母の生き様、その両者の葛藤の先に見出した答えとは。

また白虎隊の集団自決と同様に有名な、西郷邸での女たちの集団自決の様子も描く。当時の会津武士の生き様、什の掟に代表されるような教えは、貞吉ら白虎隊隊士にどのような影響を与えていたのか。

キャストを最小化し、飯沼貞雄(もとは貞吉。後に貞雄と改名)の回想録として物語を展開。合唱(コロス)が、会津の人々、西軍、語り部などとして重要な役割を担う。

オペラ「白虎」作品紹介

少年たちは
もっと一緒に笑いたかった
もっと一緒に泣きたかった
もっと一緒に語りたかった
もっと一緒に遊びたかった

そしてもっと生きたかった

自刀した白虎隊士、ただ独り生き返った貞吉は死んでいった仲間の分まで生きる運命となった
それは全てを受け入れることと全てを捨てることを意味した
己を捨て、故郷を追われ、笑うことを、怒ることを、泣くことを、そして何より自己を生きることを、許されなかった
それは大人たちの、故郷の、国の犠牲となったからだ

いつの世も弱者は大義という名の下、為政者たちの、国の犠牲となり、時に命の危険に晒される
白虎隊士も、そして貞吉もそうではなかったか
いや彼らばかりではない
鶴ヶ城に籠城する男たちの憂いを断つため、母親の手により死んでいった幼い子供や少女、そして子供たちの命を守れなかった母親たちもまた自ら命を絶ったのだ

これは今のフクシマ-Fukushima-そのものではないか
守りたくても守れない子供たちの命、そして家族
このどうしようもない状況にさらに犠牲を強いられる弱者たち
いつからこの国はこんなふうになったのか
いつからこの国は嘘をつき、欺き、弱い者を苛めても平気になったのだろうか
どうして ならぬものはならぬ と言えなくなったのだろうか

貞雄(貞吉)の口ずさむ子守唄は、 人を思いやる心、人を慈しむ心、人との絆を、命の大切さを、 そしてこの国の未来を、子供たちの未来を、この国に問いかけているのだ

オペラ〜白虎〜は、フクシマ -Fukushima- が問う、
未来への大いなる問いかけの作品なのである